テレビのアナログ放送終了まで1年を切りました。既にデジタル対応されているご家庭も多いと思いますが、これから対策しようと思っている方も沢山いるはず。そんな方々の為に私の実家での地デジ対策の事例を紹介しようと思います。
きっかけは実家からの1本の電話。
「地デジ対応のテレビを買ったけど映らない!」
そんなの電気屋さんに聞いてくれよと思いましたが、何かのネタになるかなと思って確かめに行くと本当に映らない。正確に言えば映るチャンネルもあるがブロックノイズが出てまともに見られない状況でした。多くのチャンネルはチャンネルスキャンにすら引っかかりません。もちろんアナログ放送はUHF局も含めて全て完璧に映ります。
Dpaのサイトには、「現在UHFアンテナで視聴している場合、通常はそのままで受信できます。」とあります。大阪地区の場合、テレビ大阪がUHF局なのでアナログのテレビ大阪が受信できていれば大丈夫なはず。実家でもそれを信じてデジタル対応テレビを購入したのですが・・・。
テレビの故障でなければ原因は電波障害かアンテナ関連しか考えられないので、とりあえず現在のアンテナをチェックしてみます。
大阪地区では一般的なVHF+UHFアンテナ(下:生駒山向け)とUHFアンテナ(上:神戸摩耶山向け・サンテレビ用)が設置されていました。写真で見ると綺麗に見えますが築30年は経っているので錆付いてボロボロです。でも生駒山の電波塔は見通せるしアナログ放送は問題ないので電波障害とは考えにくい、となると配線か??
確かにケーブルは経年劣化してるだろうし、混合器やブースター、分配器も怪しい。しかし全ての機器を個別にチェックする時間的余裕は無いので、同じような事例はないかとインターネット上を調べてみるとWikipediaにこんな記述が!
多数の送信所からUHF放送を受信している家庭では地上デジタル放送がうまく受信できない場合がある。例として大阪府等の関西地区では在阪局のVHF波に加えてテレビ大阪やサンテレビなどを受信している家庭が多いが通常のミキサーで混合するとゴースト障害を起こす場合があるため、特定地域向け混合機が使われている。しかし、地上デジタル放送が開始される前に製造・発売された物は関西地区の地上デジタル放送で使われるチャンネルをカットしてしまい上手く受信する事ができなくなる。このような設備ではアンテナ設備の取替えが必要となる。(Wikipediaより引用)
私の実家はまさにこの事例である可能性が非常に高いではないですか。特定地域向け混合器の存在は知っていましたが本当に盲点でした。
大まかに説明すると、大阪でのアナログ放送に必要なチャンネルはVHF(2~12ch)とUHF(19ch)で、デジタル放送に必要なチャンネルはUHF(13~24ch)です(サンテレビを除く)。つまりデジタル放送に必要なチャンネルのうち、アナログ放送では19ch以外不要ということになります。古いアナログ放送用の特定地域向け混合器ではその前後の周波数をカットするものがあるということです。
誤解の無いように書いておくと、特定地域向け混合器が付いているということは、きちんとゴーストやノイズ対策が行われている証であり、デジタル時代に映らないからといって、メーカーや業者さんを責めてはいけません。
原因がほぼ特定できたので混合器の取替えといきたい所ですが、どうせなら経年劣化したアンテナ設備一式を新しくしたい。そこで大手家電量販店で地デジアンテナ工事の見積りを取ってみることにしました。
その結果↓
アンテナマスト、ブースター込みとはいえこれほど高いとは!大手家電量販店なのでボッタクリはないと信じてますが、これだとBDレコーダーが買えそう・・・。
さすがにこの金額はもったいないのと、見積りによって必要な部品が分かったので、自分で部品を調達して設置することにしました。
参考までに今回購入したもの
- マスプロ U14TMH(14素子UHFアンテナ、ローチャンネル用)生駒山向け
- マスプロ U20TMH(20素子UHFアンテナ、ローチャンネル用)摩耶山向け
- DXアンテナ UUM210J(関西地区用混合器)
- 日本アンテナ VB-33CU(UHF、BS、CS卓上ブースター)
- アンテナケーブル(S5CFB)100m
- F型接栓(5C用)10個
- アンテナマスト 1.8m
ネット通販や日本橋電気街を利用して、総額2万円以下で揃いました。マスト固定部材は再利用するとしても、かなり安くついたんじゃないでしょうか。
幸い実家はベランダから梯子をかければ平坦な屋根に登れる構造なので、素人でも工事はできます。早速、新しいマストを固定してアンテナを設置しました。生駒山方向は強電界地域なので結構適当に方向調整しても大丈夫でしたが、摩耶山方向はテレビのレベル表示を確認しながら微調整しないと駄目でしたので、20素子にしておいて正解だったと思います。
混合器は通常のUHF+UHF混合器でも大丈夫そうでしたが、万一のことを考えて関西地区用の混合器を使用しました。これで生駒山の電波と摩耶山の電波を干渉させることなく混合できます。そのままだと生駒山の電波が強すぎるので、混合器に内蔵されている-10dbのアッテネータ(減衰器)を使用してバランスを取りました。
ブースターは無しでも映りましたが、悪天候時にサンテレビが映りにくくなる可能性を考慮して一応付けてあります。これで全てのチャンネルが完璧に受信できるようになりました。
ちなみに屋根上から見た生駒山の電波塔(クリックで拡大します)
大阪に東京タワーのような高い電波塔が無い理由が、この生駒送信所の存在です。山頂に小規模な電波塔を建てるだけで、640m以上の高さから関西全域に放送できるわけですから、わざわざコストをかけて都心部に電波塔は建てないでしょう。
この電波塔群を見て、共用の電波塔を生駒山上に1本立てて観光スポットにしたら面白いのにと思いました。その方が維持管理コストも下がるだろうし、展望台を設ければ東京スカイツリーを越える約700mの高さから360度の絶景が楽しめる。しかも生駒ケーブルを使って誰でも行ける場所というのは大きい。まぁ妄想ですけど・・・。
というわけでこんなにスッキリ、綺麗になりました。上が神戸方向の20素子UHFアンテナ、下が生駒山方向の14素子UHFアンテナです。
私の実家はこれで地デジ対策が完了しましたが、周りを見渡すと似たようなアンテナ状況の家がいっぱい。全ての家が特定地域向け混合器を使っているとは限りませんが、大阪ではテレビ大阪とサンテレビを受信している世帯がほとんどだと考えると、古い戸建ではそれなりに使用されているのではないでしょうか。
上記のような事例があるので、このままアナログ放送が停波するとパニックが起こるかもしれません。こういう問題はもっと周知徹底しなければ駄目だと思います。今回の場合、たまたまこの時期に気付いただけで、これが停波直前だったらと思うとゾッとします。皆さんも地デジ対策はお早めに・・・。